大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 事件番号不詳 判決

右の者等に対する法人税法違反並に所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官検事志保田実関與の上審理を遂げ左の通り判決する。

主文

被告人德島日産自動車株式会社を

第一の法人税法違反の点につき罰金三十万円に処す。

第二の所得税法違反中

(一)  の点につき罰金三千円に処す

(二)  の点につき罰金一万五千円に処す

(三)  の点につき罰金五千円に処す

(四)  の点につき罰金二万五千円に処す

(五)  の点につき罰金三千円に処す

(六)  の点につき罰金五千円に処す

(七)  の点につき罰金二千円に処す

(八)  の点につき罰金一万円に処す

(九)  の点につき罰金三万円に処す

(一〇)  の点につき罰金三千円に処す

(一一)  の点につき罰金二千円に処す

(一二)  の点につき罰金一万五千円に処す

(一三)  の点につき罰金一万二千円に処す

(一四)  の点につき罰金三万二千円に処す

(一五)  の点につき罰金六千円に処す

(一六)  の点につき罰金八千円に処す

(一七)  の点につき罰金五千円に処す

(一八)  の点につき罰金一万二千円に処す

(一九)  の点につき罰金二千円に処す

(二〇)  の点につき罰金一万五千円に処す

(二一)  の点につき罰金二千円に処す

(二二)  の点につき罰金三千円に処す

(二三)  の点につき罰金四千円に処す

(二四)  の点につき罰金千円に処す

(二五)  の点につき罰金五千円に処す

(二六)  の点につき罰金四千円に処す

(二七)  の点につき罰金九千円に処す

(二九)  の点につき罰金二千円に処す

(三〇)  の点につき罰金五千円に処す

(三一)  の点につき罰金四千円に処す

(三二)  の点につき罰金千円に処す

(三三)  の点につき罰金一万五千円に処す

(三四)  の点につき罰金千円に処す

(三五)  の点につき罰金一万二千円に処す

(三六)  の点につき罰金四千円に処す

(三七)  の点につき罰金六千円に処す

(三八)  の点につき罰金五千円に処す

(三九)  の点につき罰金四千円に処す

(四〇)  の点につき罰金三千円に処す

(四一)  の点につき罰金二千円に処す

(四二)  の点につき罰金千円に処す

(四三)  の点につき罰金二千円に処す

(四四)  の点につき罰金千円に処す

(四五)  の点につき罰金八千円に処す

(四六)  の点につき罰金二万五千円に処す

(四七)  の点につき罰金四千円に処す

(四八)  の点につき罰金二万円に処す

(四九)  の点につき罰金三万円に処す

(五〇)  の点につき罰金四万円に処す

(五一)  の点につき罰金四万円に処す

(五二)  の点につき罰金四万五千円に処す

被告人星合克夫を懲役二月に処す、被告人松原虎雄を懲役三月に処す。

但し被告人両名に対し本判決確定の日より何れも二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人等の連帶負担とする。

被告会社及被告人松原に対する所得税法違反の公訴事実中被告人松原が被告会社の業務に関して昭和二十三年九月一日被告会社の役員星合顯三外六名に対し賞與に類する記念品代二万八千円の支給をなした際その所得税額五千六百円の源泉徴收を為さなかつたものであるとの点(昭和二十四年二月二十八日附起訴状第一(二八))は無罪。

被告人星合克夫に対する所得税法違反の点は無罪。

理由

罪となるべき事実

被告德島日産自動車株式会社は昭和十二年九月三日より德島市富田浜一丁目に営業所を設け自動車の部分品等の製作販売修理等の事業を目的とする同族会社であり、被告人星合克夫は同社設立以来その代表取締役の職に在り、被告人松原虎雄は昭和二十二年八月十五日以来同社常務取締役兼総務部長となりそれぞれ同会社の経営に従事して来たものであるが

第一  被告人星合及松原は共謀の上被告会社の業務に関し法人税負担の軽減を図ろうと考えこれが手段として別口帳簿の作成等の方法により法人税逋脱を意企し、昭和二十二年四月一日に始まり昭和二十三年三月三十一日に了る被告会社の第十二期事業年度における法人税課税所得中予てこれが為め別口帳簿(別途出納帳と表題のある公刑第三号証)及びメモ程度の記載(公刑第四号証)に止めて殊更正規の帳簿に整理記帳せずして除外していた利益金四十三万千四百一円(被告人等に於て故意のない脱漏した利益金を除外する)を秘匿し、昭和二十三年七月二十三日被告人松原は德島税務署長に対して右事業年度の法人税の申告納税をなすに際して前叙の秘匿所得を除外した虚構の決算書類の提出とともに同事業年度の普通所得を五十三万五千三百円超過所得金額を五十三万五千四百二十五円これに対する法人税額三十三万五千五百十三円と虚構の申告をなし以つて詐僞其の他の不正行為により法人税二十万二千二百五十九円(脱漏分を除く、尚税額計算は被告会社の申告に対する更正所得四十六万三千八百七十四円の上積み計算による税額より納税分を控除する)を逋脱し

第二被告人松原は被告会社の業務に関して

(一)  昭和二十二年十二月二十六日前記福島本町三丁目なる当時の右会社本店(以下旧本店という)において同社の事務員河野勇等二十二名に対し同年十一月分別途手当として同社の帳簿上正式に給與支出の記帳をなさざる金一万一千八百七十円の裏支給をした際右支拂金額につき所得税法第三十八條第一項所定の税額の所得税の徴收(以下源泉徴收という)をしなければならなかつたのに該所得税額二千六百七十二円二十銭を徴收せず

(二)  同年十二月三十日右旧本店において同社の役員田村英之等四名及び事務員河野勇等十六名計二十名に対し同年十二月分別途手当四万三千四百円の裏支給をした際その所得税額一万二千五百九円の源泉徴收をなさず

(三)  同年十二月三十日右旧本店において同社の役員田村英之等四名に対し別途賞與三万二千五百円の裏支給をした際その所得税額四千五百九十八円の源泉徴收をなさず

(四)  同年十二月三十日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十名に対し越冬資金十四万五千九百円の裏支給をした際その所得税額二万四千四百九十円の源泉徴收をなさず

(五)  昭和二十三年二月六日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名に対し同年一月分特別手当七千円の裏支給をした際その所得税額二千五十七円の源泉徴收をなさず

(六)  同年二月二十六日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十二名に対し同年二月分の別途手当一万九千二百五十六円の裏支給をした際その所得税額四千百三十四円の源泉徴收をなさず

(七)  同年三月八日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名に対し同年二月分別途手当五千三百四十円の裏支給をした際その所得税額千五百八十八円の源泉徴收をなさず

(八)  同年三月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名及び事務員河野勇等二十三名計二十七名に対し同年三月分別途手当三万九千三百八十円の裏支給をした際その所得税額九千三百二十八円の源泉徴收をなさず

(九)  同年三月二十六日右旧本店において同社の工員福島泰淸等六十五名に対し同年三月分歩増九万二千六百円の裏支給をした際その所得税額二万九千九十一円八銭の源泉徴收をなさず

(一〇)  同年四月二日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十四名に対し同年四月分集金手当一万五百二十円の裏支給をした際その所得税額二千百八十三円の源泉徴收をなさず

(一一)  同年四月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名に対し同年四月分別途手当六千円の裏支給をした際その所得税額千七百三十一円の源泉徴收をなさず

(一二)  同年五月二十六日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十三名に対し同年四月分別途手当四万二千六百五十円の裏支給をした際その所得税額一万二千六百六十一円の源泉徴收をなさず

(一三)  同年五月二十六日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十六名に対し同年五月分特別手当四万三千八百九十円の裏支給をした際その所得税額一万九百三十九円の源泉徴收をなさず

(一四)  同年五月二十六日右旧本店において同社の工員福島泰淸等六十八名に対し同年五月分歩増九万三千二百円の裏支給をした際その所得税額三万一千五百七十八円の源泉徴收をなさず

(一五)  同年五月二十九日右旧本店において同社の役員星合顯三等五名に対し同年五月分別途手当一万三千五百円の裏支給をした際その所得税額五千百七十九円の源泉徴收をなさず

(一六)  同年六月四日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十二名に対し同年三月分追加給與二万三百五十円の裏支給をした際その所得税額七千五百四十一円の源泉徴收をなさず

(一七)  同年六月四日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十四名に対し同年四月分追加給與九千七百二十円の裏支給をした際その所得税額四千四十四円の源泉徴收をなさず

(一八)  同年六月四日右旧本店において同社の事務員河野勇等二十四名に対し同年五月分追加給與二万七千五百八十円の裏支給をした際その所得税額一万一千二百六十五円の源泉徴收をなさず

(一九)  同年六月二十六日右旧本店において同社の事務員庄野俊一等十六名に対し同年六月分別途手当二万七千七百九十円の裏支給をした際その所得税額千八百三十九円の源泉徴收をなさず

(二〇)  同年六月二十六日右旧本店において同社の工員福島泰淸等四十二名に対し同年六月分歩増七万八千六百円の裏支給をした際その所得税額一万二千九百二十三円の源泉徴收をなさず

(二一)  同年六月二十九日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名に対し同年六月分別途手当一万一千円の裏支給をした際その所得税額千三百五十一円の源泉徴收をなさず

(二二)  同年七月三日右旧本店において同社の事務員河野勇等十九名に対し同年六月分集金手当一万二千六百円の裏支給をした際その所得税額二千二百八十一円の源泉徴收をなさず

(二三)  同年七月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等四名及び事務員河野勇等十六名計二十名に対し同年七月分別途手当三万五千百円の裏支給をした際その所得税額三千五百八十四円の源泉徴收をなさず

(二四)  同年八月五日右旧本店において同社の事務員河野勇等十六名に対し同年七月分集金手当四千四百三十円の裏支給をした際その所得税額八百五十八円の源泉徴收をなさず

(二五)  同年八月二十六日右新本店において同社の事務員河野勇等二十五名に対し同年八月分別途手当二万四千八百七十円の裏支給をした際その所得税額四千七百七十三円の源泉徴收をなさず

(二六)  同年八月三十一日右新本店において同社の役員星合顯三等五名に対し同年八月分別途手当一万六千円の裏支給をした際その所得税額三千二百三円の源泉徴收をなさず

(二七)  同年八月三十一日右新本店において同社役員星合顯三等八名(常勤者でない者も含む)に対し賞與四万四千円の裏支給をした際その所得税額八千八百円の源泉徴收をなさず

(二九)  同年九月三日右新本店において同社の事務員河野勇等二十五名に対し同年八月分集金手当八千九百円の裏支給をした際その所得税額千八百三十円の源泉徴收をなさず

(三〇)  同年九月二十六日右新本店において同社の事務員河野勇等二十五名に対し同年九月分別途手当二万四千八百七十円の裏支給をした際その所得税額四千三百八十円の源泉徴收をなさず

(三一)  同年九月二十七日右新本店において同社の役員星合顯三等五名に対し同年九月分特別手当一万六千円の裏支給をした際その所得税額三千二百三円の源泉徴收をなさず

(三二)  同年十月三日右新本店において同社の事務員河野勇等十八名に対し同年九月分集金手当二千四百五十円の裏支給をした際その所得税額五百二十九円の源泉徴收をなさず

(三三)  同年十月二十六日右新本店において同社の役員星合顯三等五名及び事務員河野勇等二十七名計三十二名に対し同年十月分別途手当六万八千三百二十円の裏支給をした際その所得税額一万三千四百四十八円の源泉徴收をなさず

(三四)  同年十一月四日右新本店において同社の事務員河野勇等十九名に対し同年十月分集金手当三千五百六十円の裏支給をした際その所得税額八百十三円の源泉徴收をなさず

(三五)  同年十一月二十六日右新本店において同社の事務員河野勇等二十七名に対し同年十一月分別途手当五万四千二百二十円の裏支給をした際その所得税額一万五百四十五円四十銭の源泉徴收をなさず

(三六)  同年十一月二十七日右新本店において同社の役員星合顯三等五名に対し同年十一月分別途手当一万六千円の裏支給をした際その所得税額三千二百三円の源泉徴收をなさず

(三七)  同年十二月三日右新本店において同社の事務員河野勇等二十八名に対し同年十一月分集金手当二万四千五百五十円の裏支給をした際その所得税額五千二百七十八円の源泉徴收をなさず

(三八)  昭和二十二年十二月二十六日前記旧本店において同社の工員高島德一等四十三名に対し同年十二月分の正規給料二十一万四千五百六十二円の表支給をした際その所得税額四千二百四十三円八十三銭の源泉徴收をなすべきであつたのに拘らず同年中における右工員等に対する裏給與の支給事実を隠蔽した結果所得税法第四十條所定の年末調整により過納額を生じたものの如く裝い該過納額を右所得税額に充当するとの口実の下に右源泉徴收をなさず

(三九)  昭和二十三年一月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等三名及び事務員河野勇等三十三名計三十六名に対し同年一月分の正規給料七万一千八百三十八円の表支給をした際その所得税額三千百七十一円十五銭の源泉徴收をなすべきであつたのに拘らず前記過納額の残余あるものの如く裝い該過納額残余を右所得税額に充当するとの口実の下に右源泉徴收をなさず

(四〇)  同年二月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等三名及び事務員河野勇等二十七名計三十名に対し同年二月分の正規給料五万七千四百三十三円の表支給をした際その所得税額二千三百二十四円七十五銭の源泉徴收をなすべきであつたのに拘らず前記過納額の残余あるものの如く裝い該過納額残余を右所得税額に充当するとの口実の下に右源泉徴收をなさず

(四一)  同年三月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等三名及び事務員河野勇等十五名計十八名に対し同年三月分の正規給料二万八千七百八十一円の表支給をした際その所得税額一千百二十円の源泉徴收をなすべきであつたのに拘らず前記過納額の残余あるものの如く裝い該過納額残余を右所得税額に充当するとの口実の下に右源泉徴收をなさず

(四二)  同年四月二十六日右旧本店において同社の役員星合顯三等及び事務員河野勇等十一名計十四名に対し同年四月分の正規給料二万三千四百四円の表支給をした際前項同様その所得税額八百十二円七十八銭の源泉徴收をなさず

(四三)  同年五月二十六日右旧本店において同社の役員星合克夫外一名及び事務員山田儀一等十名計十二名に対し同年五月分給料一万九千三百六十二円の表支給をした際前項同様その所得税額一千四十四円の源泉徴收をなさず

(四四)  昭和二十三年四月二十一日前記旧本店において同社の役員星合芳太郞に対し退職金二千円の裏支給をした際その支拂金額につき所得税法第三十八條第一項所定の所得税額二百円の源泉徴收をなさず

(四五)  昭和二十三年八月三十一日前記新本店において同社の役員星合克夫外八名に対し祕密配当金三万六千円の裏支給をした際その支給金額につき所得税法第三十七條第一項所定の所得税額七千二百円の源泉徴收をなさず

(四六)  昭和二十三年五月同社職員八十九名に対し同月分給料二十万二千四百六十七円を支拂いその所得税額二万四千三百四十五円四十銭の源泉徴收をしたが右税額を翌六月十日までに所轄德島税務署において政府に納付しなければならないのに拘らずこれを政府に納付せず

(四七)  同年六月二十六日同社職員二十七名に対し同月分給料七万八千四百七十九円を支拂いその所得税額三千六十五円の源泉徴收をしたのに拘らず翌七月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

(四八)  同年七月同社職員五十八名に対し同月分給料二十四万五千三百十九円を支拂いその所得税額一万七千八百二円六十銭の源泉徴收をしたのに拘らず翌八月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

(四九)  同年八月同社職員八十四名に対し同月分給料三十七万七千二百九十九円を支拂いその所得税額二万七千三百二十七円の源泉徴收をしたのに拘らず翌九月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

(五〇)  同年九月同社職員八十六名に対し同月分給料四十二万九千五百四十円を支拂いその所得税額三万六千七十一円の源泉徴收をしたのに拘らず翌十月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

(五一)  同年十月同社職員八十六名に対し同月分給料四十三万七千五百五十八円を支拂いその所得税額三万八千六百九十七円の源泉徴收をしたのに拘らず翌十一月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

(五二)  同年十一月同社職員八十四名に対し同月分給料四十五万五千二百六十五円を支拂いその所得税額四万二千六百八円六十銭の源泉徴收をしたのに拘らず翌十二月十日までに前同様右税額を政府に納付せず

に居たものである。

証拠

判示冒頭記載の事実は

一、被告会社の商業登記簿謄本の記載

一、検事の被告人星合に対する第一回供述調書(法人税法違反事件)

一、当公廷における被告人星合、松原の各供述

第一事実中

(一)、被告会社において被告人松原が判示確定申告を為しこれに判示更正のあつた点は

一、德島税務署長証明の法人税申告書写(公刑第二十七号証)

一、同上証明の更正決定額写(公刑第二十八号証)

一、第二回公判調書中証人福島良好の証言中判示日時被告会社から判示法人税の申告のあつた旨の記載

一、検事の被告人松原に対する第二回供述調書(法人税法違反事件)中判示申告に対して更正のあつた旨の記載

(二)、被告会社において判示申告所得の外に尚判示除外所得四三一、四〇一円のあつた点は

一、配当金其の他借入金其の他明細帳(公刑第二号証)中昭和二十二年六月三日決定の二十一年度德島日産自動車販売株式会社配当役員賞與支拂表中田村英之外五名に対して合計一五、〇〇〇円の賞與金を支出した旨の記載

一、検事の被告人星合に対する第四回供述調書(法人税法違反事件)

一、被告人等の当公廷における供述

以上により一五、〇〇〇円の賞與を申告利益外に利益処分したこと従つてこれに対する所得のあつた事

一、別途出納簿(公刑第三号証)の記載による別途收入金(給料合計五八、四九〇円、年末役員特別支給二一、〇〇〇円、流用二〇、〇〇〇円、松原虎雄に流用一七、九〇〇円、鏡製紙トラツク代流用二八五、〇〇〇円、但し後記証拠により認める原価十一万円を控除せば利益金となる。以上の支出に対する收入金爾余の支出は経費的支出と看て損金となる)收入金除外一二、五〇〇円(昭和二十二年十二月三十日入金二分の一として一二、五〇〇円のみを掲げる)残高一八、〇〇一円とある事実

一、別途合計明細綴(公刑第四号証)中十六丁年末役員給與と題する書面中社長外五名に支給決定二一、〇〇〇円の記載及二十三丁三豊トラツク代金処理と題する書面中売却代金二八五、〇〇〇円を仮受金として処理する記載

一、当審第二回公判調書中の証人福島良好の前掲公刑第三号証は判示に対応する売上脱落の記載がある旨の供述記載

一、検事の被告人松原に対する第三回供述調書中昭和二十三年三月十八日鏡製紙に二十八万五千円にて売却したトラツクは昭和二十二年十月十一万円にて買入れたものであるが、右売上金は仮受金として記帳した旨の供述記載

一、検事の被告人松原に対する第四回供述調書中東洋工業株式会社からの割戻金一五二、〇〇〇円を利益金とせず仮受金として経理したのを税務署で否認した旨の供述記載

一、雑勘定元帳(公刑第六号証)中昭和二十三年十月十九日東洋工業株式会社からの入金一五二、〇〇〇円を仮受金として記帳してあること

一、検事の被告人星合に対する第一乃至五回供述調書(法人税法違反事件)

一、検事の被告人松原に対する第一乃至四回供述調書(法人税法違反事件)

以上による被告会社の收入金合計は四一六、四〇一円となり前記一五、〇〇〇円を合して四三一、四〇一円となること算数上明かな事実。

(三)、前敍所得の除外は被告人松原、星合の両名において判示共謀の上不正手段にて法人税を免れる目的でなされたとの点は

一、前記(二)認定に係る祕匿利益の帳簿方法

一、前記(公刑第四号証)中祕資金対策と題する書面の記載及び前記(公刑第二、三号証)の現存及びその記載

一、検事の被告人松原に対する第三回供述調書中トラツク売却代金二八五、〇〇〇円は増資の際株主の増資拂込金に流用充当するため故らに会計簿上に売得金として計上せず仮受金として計上した旨の供述記載

一、検事の被告人松原に対する第四回供述調書中重役への祕密給與を出すのは前重役田村英之の採つていた方針で自分もそれを踏襲してきた旨、並にトラツク売却代金二八五、〇〇〇円を仮受金として仕訳する経理は税法上許されないものであるが増資々金の必要に迫られて敍上の経理をした旨、並に前掲(公刑第二号証)は機密書類綴である旨の供述記載

一、検事の被告人星合に対する第四回供述調書中同被告人がうけた祕密給與は被告人松原が雑收入を本会計簿に記帳せずして祕密給與に当てた旨、自分が前社長の命により支給した祕密給與、賞與、配当は別口帳簿である前記公刑第二号証に記帳した旨の供述記載

一、当公廷における被告人松原の供述中被告人等その他の役員は被告会社が同族会社であり現業重役が過半数の株式を所有している関係上重役会即ち株主総会であり被告等は日常絶えず会社経営等に関して相談していた旨の供述

以上を綜合して被告人等の判示犯意が認められる。

尚被告人松原はトラツク代二八五、〇〇〇円については仮受金として記帳の上次期決算期に会社收入とするものであり脱税の意思なく又東洋工業株式会社の割戻金一五二、〇〇〇円についても当時如何なる種類の金か判らなかつたから仮受金として記帳整理しておいたものであり右の経理は会計学上許される処置であると弁疏しているところであるが前者については各事業年度の收益はそれが生じた事業年度の收益となすべきであつてこれを翌年度の收益に予定する如きことは税收入を人為的に操作することになり税法上許されないところであり、苟くも被告人等に於て当期に納付すべき法人税を翌年度に繰延操作する意思あるに於いては畢竟当該年度の法人税の脱税の意思ありというものであり又後者については

一、昭和二十一年度来翰綴(公刑第五号証)の東洋工業株式会社販売課発丸市屋商店宛一月十九日交付書面の懇談会記録中昭和二十二年十二月四日東洋工業株式会社における懇談会の席上トラツク一台につき四千円の値引金を支拂われたい旨の要望のあつた旨の記載

一、当公廷における証人星合顯三の証言中被告会社の重役たる同証人が前掲東洋工業の懇談会に出席した旨並に昭和二十三年一月十九日東洋工業株式会社より一五二、〇〇〇円の送金のあつたことを後日知つた旨の供述記載

一、前掲公刑第五号証の懇談会記録書面に右星合顯三の認印及被告人星合の昭和二十三年一月十九日附の日附印の押捺あること

一、当公廷における被告人松原の被告会社においては殆んど毎日現業重役会というようなものが開催されていた旨の供述

一、前記公刑第六号証中右割戻金を一月十九日仮受金として仕訳せる記帳

に徴すれば被告人等に於いて右一五二、〇〇〇円の性質を十分に諒知していたことを推知できるからこれを仮受金として記帳して年度末まで整理しないのは所得祕匿というべきであるから被告の弁解は何れも理由がない

(四)  被告会社の脱税額の判示の如くなる点は

一、登記簿謄本に認めうる被告会社の資本金額の状況

一、当公廷に於ける被告人両名の供述

以上により認めうる被告会社の法人税法上の資本金額が四九八、七五〇円となること

一、前敍認定に係る被告会社の申告所得金が五八五、三〇〇円にて寄附金免除額五〇、〇〇〇円を差引き五三五、三〇〇円となりその更正の結果被告会社の普通所得が四六三、八七四円にて損金算入寄附金四五、〇七二円を差引き前認定の祕匿所得四三一、四〇一円を加算し得られる所得額が八五〇、二〇三円であつて超過所得が前記資本金額の一割を控除し八〇〇、三二八円となりこれに損金算入指定寄附金四五、〇七二円を加算して超過所得八四五、四〇〇円(算入限度被告人に有利に計算する)となること

以上により行為当時の法人税率を適用して得べき税額が判示の如くなること算数上明な事実

第二事実(一)乃至(五二)但し(二八)を除く。

一、当公廷に於ける証人佐藤秀香の証言

一、佐藤秀香外一名作成の犯則嫌疑事件調査顛末書

一、前掲公刑第二、三、四号証

一、昭和二十三年度給料支給表(公刑第十七号証)

一、工員賃金別口支給表(公刑第十八号証)

一、昭和二十三年所得税徴收簿一人別(公刑第二十号証)

一、甲種勤労所得に対する分類所得徴收簿(公刑第二十一号証)

一、所得税源泉徴收簿(公刑第二十二号証)

一、仮受金帳簿謄本(公刑第二十三号証)

一、給與所得に対する源泉徴收所得税未納分納付表(公刑第二十四号証)

(以上各証拠物にて立証されるべき(一)乃至(五二)但し(二八)を除く第十二回公判調書中検察官の所得税法違反被告事件公訴事実各項目別の証拠説明引用)

一、検事の被告人松原に対する第一回供述調書(所得税法違反事件)

一、当公廷における被告人松原の供述

以上を綜合して判示事実は証明せられたものとする。

(附記)

檢察官の本件公訴事実は被告会社の祕匿所得は判示認定に係る所為以外に尚(一)三万四千八百円の役員賞與、(二)二十万二千五百円の祕密配当があり、これに対して尚法人税逋脱の責任があると謂うのであるが、前者(一)については被告人両名の当公廷の供述及公刑第二号証中二十一年度德島日産自動車販売株式会社配当役員賞與表中役員において賞與金一五、〇〇〇円、四、五月給與追加補給金二、六〇〇円、別追加七、四〇〇円、四、五月分追加六、〇〇〇円及役員報酬追加支拂精算書中田村英之外二名に合計一八、八〇〇円の支給を為されたことはこれを認めることができるが、被告人等の自認する一五、〇〇〇円を除いてはこれを利益処分としての賞與と見るべきであるか、或は損金に算入さるべき一般経費となる給與と見るべきかの判断は專門の法律的素養を要する問題であるから、これを法律上は利益処分と判断すべきものとするも被告人等においてこれを損失に計上すべき一般経費であると考えていたときには被告会社に対する法人税を課税するは格別被告人に対し法人税逋脱の責を帰せしめるべきでない。

次に後者(二)について判断するに祕密配当二十万二千五百円は檢察官の見解によれば被告会社が戰時中德島県自動車工業株式会社の設立に際してその所有の資産の大部分を現物出資してこれに対して株式四千八百四株の割当をうけたが昭和十九年六月右株式を売却しその売却利益を祕密配当したものであるから利益処分であるというのであつてこれに対し被告人等においては右株式を売却したことなく従つてこれが売却利益の配当処分であることも否認して役員等の借受金にすぎないというのであるが、仮令右取引が売買であるとしても被告人等の供述、検事の被告人星合に対する第三回供述調書、証人三木繁幸の証言及德島税務署長の証明書によれば被告会社の第十期事業年度(自昭和二十年四月至昭和二十一年三月)において前記株式の売却処分益がありながらこれを利益金より除外していたのでこれに対して收税官庁においては政府決定により該売買利益金に課税したがその翌十一期事業年度において右売却処分益の実体不明であるとの事由にてこれを損金に算入し、賦課処分に於いても従つて前年度課税した所得を当該年度損金に還元して課税したものであり、次で本件第十二期事業年度において経理関係より祕密配当と看做さるべきであるとして改めて課税したことを認められる且又一般に賦課処分等行政行為の確定力は脱漏所得にまで及ぶことはないと(法人税法第三十一條、所得税法第四十六條参照)考えるべきであるが、被告会社において第十期事業年度において政府決定により既に課税の対象とせられたに対し既に税額納付後、その翌年度において收税官庁がその内面的の調査により前年度の課税を違法として、これを斟酌の上、当該年度の法人税額を決定するもその税額決定の内容理由については被告会社において察知するに由なく且又斯る場合は收税官庁においては過誤納金として不当利得金たる租税の返還又は翌年度租税に充当する旨の措置を為すべきであつて單に内部的の処置に基き適宜次期課税に斟酌を加うべき性質のものでなく從つて被告会社に於いてもその間の経緯事情につき調査しこれを知悉するの機会のなかつたことは証人三木繁幸の証言により認められるところであるから被告会社が其の後決算書類において課税処分前の状態に貸方借方の記帳を復元記帳したとしても唯これだけの事実を以つて前敍証人の証言に鑑み被告人等においてこれが逋脱の犯意があつたとはなし得ないから、これが課税物件となるは格別被告人に対し刑事上の責任を負担せしめるべきでない。

適條

被告会社に対し

第一の罪につき法人税法第五十一條第四十八條(改正法)、罰金等臨時措置法第二條、刑法第六條第十條

第二の罪の内(一)乃至(二二)、(三八)乃至(四六)の罪に対し各昭和二十三年法律第百七号第六十條、所得税法(昭和二十三年改正前)第六十九條第二項、爾余の罪に対し各所得税法(昭和二十三年改正後)第六十九條第二項第三十八條第七十二條、罰金等臨時措置法第二條、刑法第六條第十條

被告人星合に対し

第一の罪につき法人税法第四十八條

被告人松原に対し

第一の罪につき法人税法第四十八條

第二の罪の内(一)乃至(二七)、(三八)乃至(四六)の罪に対し各昭和二十三年法律第百七号第六十條、所得税法(昭和二十三年改正前)第六十九條第二項、爾余の罪に対し各所得税法(昭和二十三年改正後)第六十九條第二項第三十八條

刑法第四十五條第四十七條第十條(何れも懲役刑選択)第二十五條

被告会社及被告人松原、星合に対し刑事訴訟法第百八十一條

(量刑について)

本件犯罪について考えるに被告会社の法人所得の祕匿額及び租税逋脱手段は必ずしもその金額にして多額、その方法にして惡質とは云い難く、又所得税の源泉徴收義務違反についても当時の労働攻勢の間に処してはその犯行のに斟酌すべきものが多分にありと考えられ、同時に本件記録に顯われた被告人両名の性格素行等並に其情状の後納税完了している点に徴すれば被告会社及被告人松原、星合に対し夫々主文掲記の刑に処するを相当とする。

被告会社及び被告人松原に対する公訴事実中被告人松原が被告会社の業務に関して主文末項掲記の源泉徴收をなさなかつたとの点(昭和二十四年二月二十八日附起訴状第一、(二八)事実については被告人松原に於て源泉徴收をなさなかつたことは認められるけれども、同被告人等は公訴事実掲記の物品は記念品として贈與したものであるから課税対象としての給與でないと弁疏するところであり又收税官庁に於いても現物的給與についてはその金額寡額にして弊害のない限り(本件は必ずしも寡額とは云えないが)その給與に対して課税していない実情に鑑み同被告人等に於て課税除外と誤信したのは已むを得ないところであり畢竟同被告人は右の給與につき源泉徴收すべき義務あることの認識を欠いたものと認められるから右の公訴事実についてはこれが犯意につき犯罪の証明のないことに帰する。仍て刑事訴訟法第三百三十六條に則り右の事実には無罪の言渡を為すべきものとする

被告人星合に対する公訴事実中、同被告人が被告会社より同社役員に対して正規の給與以外に所得税逋脱の目的を以て同社の正規の帳簿上に記帳せずして祕密帳簿にのみ記録する裏給與等を支給するものなる情を知悉して同社より

(一)  昭和二十二年七月五日一時借受金名義の祕密配当金一万七千円

(二)  同年六月十日頃迄の間祕密の賞與並に追加支給金計九千五百円

(三)  同年八月十三日には同年一月乃至七月分の裏給與七千六百円

(四)  同年九月四日には同年八月分の裏給與三千三百円

(五)  同年九月二十六日より同年十二月三十日までの間同年九月乃至十二月分の裏給與八千円(月二千円宛)

(六)  同年十二月三十日祕密賞與六千円

計五万一千四百円の支拂を受けたのに拘らず昭和二十三年一月末日德島税務署に対し昭和二十二年中の自己の所得税額につき全然確定申告をせず右五万一千四百円の所得のあつた事実を故らに隠蔽し以て詐僞その他不正の行為により所得税額の一部一万一千八百九十円(右隠蔽所得額五一、四〇〇円に対する所得税額)につき所得税を免れたものであるとの点については当公廷に顯われた証拠によりこれを認定し得ないことはなく且被告会社に於ては給與の支給につき別口帳簿を作成し正規の帳簿に記載をなさないときはその正規の帳簿は会社経理の真実とは相違するから、かかる諸帳簿の備付を以つて詐僞その他不正行為に該当するとも謂い得られる。しかしながら、個人所得の逋脱犯の成立するには違反者に於いて積極的に之が詐僞不正の行為のなされる場合でなければならない。然るに本件公訴事実に徴すれば被告人星合は被告会社に於て不正手段を以つて祕密給與を支給するの情を知つて之が支給をうけたのに拘らず申告書を提出しなかつたというのであつてかかる場合被告会社取締役としてその業務に関し給與等の支拂金に対する源泉徴收義務違反罪の正犯又は従犯の成立する場合のあるは格別、これがために個人所得税の逋脱犯の成立するものではない。蓋し給與所得についてはその源泉にて徴收するによつて税收入の確保を図るものであり唯源泉にて全所得を把握し得ない場合受給者より申告納税せしめるものであるから、源泉にて全所得を把握し得て従てこれが租税徴收せられるべくして徴收されなかつたことに対してこれが情を知るも受給者としてその個人所得税逋脱の責に任ずべきものではない。

仍て右の公訴事実は罪とならないものと解するから刑事訴訟法第三百三十六條に則り無罪の言渡を為すべきものとする。

(裁判官 村崎満)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!